前回の記事、『余計な事の話。』の雑誌の引用を読んで、確かになるほど、素敵な考え方だなと思いました。そういう感覚に近いもので私にも好きな文章があるのでご紹介します。
頬を撫でてゆく風の感触も甘く、季節が変わってゆこうとしていることがわかります。アラスカに暮らし始めて十五年が経ちましたが、ぼくはページをめくるようにはっきりと変化してゆくこの土地の季節感が好きです。
人間の気持ちとは可笑しいものですね。どうしようもなく些細な日常に左右されている一方で、風の感触や初夏の気配で、こんなにも豊かになれるのですから。人の心は、深くて、そして不思議なほど浅いのだと思います。きっと、その浅さで、人は生きていけるのでしょう。
星野道夫(1999年)旅をする木 文春文庫
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167515027