2015年3月1日日曜日

“きゃ”の話




早起きしなきゃ

シャツにアイロンをかけなきゃ

お化粧しなきゃ

歯を磨かなきゃ

会社へ行かなきゃ

そして、山積みの問題とだめな自分に向き合わなきゃ

人としゃべらなきゃ

思っている事を上手に伝えなきゃ

友だちを大切にしなきゃ

大切じゃない友だちなんていないけど

メールを返さなきゃ

わた埃が遊んでる、汚れた床を掃除しなきゃ

ゴミを捨てなきゃ

ごはんは作って食べなきゃ

楽しい休日を過ごさなきゃ

じゃなくて、誰かに楽しそうと思われる休日を過ごさなきゃ

新聞を読まなきゃ

本を読まなきゃ

頭がよくならなきゃ

いい女にならなきゃ

いい女がどんな女かわからないけど

結婚しなきゃ

恋をしなきゃ

素敵な人と出会わなきゃ

頑張らなきゃ

いろんな事、全部

努力しなきゃ

嫌な事は忘れなきゃ

苦しくても我慢しなきゃ

明日の事を考えなきゃ

それから、もっと先の将来の自分の事、家族の事、考えなきゃ

いつも笑顔でいなきゃ

人生を楽しまなきゃ

かわいい靴下を履かなきゃ


もっと、もっと、いっぱい、

きゃ、きゃ、きゃ、、、



消化できないままに、またどんどん増えて、両手いっぱいに抱え込んで歩いていたら、
こないだ、
つまずいた拍子に全部落としてきてしまった。

両手と一緒に頭の中まで空っぽになって、ふわふわ体が浮き始めた。
本当に拾わなければならないのは一体・・・。

転がり落ちた物たちの中に見え隠れする見栄っ張りで怠惰で臆病な精神に笑ってしまう。

空っぽになった手にフライパンを握り、今朝はソーセージを焼いている。
今はもう、それで手いっぱい。
ひとつだって拾いになどゆけません。

焼けるのを待ちながら晴れた空を眺めると、通りの向こうに梅の花が咲いている。
白い、小さな花がこっそりと、だけど当然に。

知らない間に、春ですね。
空っぽの体の中を、まだ冷たい春の風が通り抜けていきました。